介護士になろうと考えている方に心に留めていてほしいことがあります。それは利用者に敬意を持つということです。介護施設を利用している方の多くは、80年、90年という年月を生きてきた方々です。しかし、現場では、ついそのことを忘れがちになってしまいます。食事や入浴、レクリエーション、排泄介助など、介護士は日々、停滞させずに、次々とこなさなければいけない多くの仕事があり、効率性を追求することが頭をよぎってしまいがちです。しかし、一人一人ゆっくりと話を聞いていくことで、人生の様々な歩みを知ることができ、その方を介護することの重さを感じることができます。これは、非常に大事なことです。現状、利用者というのは、戦争体験がある方が多く、その体験の上に今がある方がほとんどです。もちろん今後は、戦争体験のない利用者というのも増えてきますが、人生における苦労話や体験談というのは、上手に耳を傾け聞いていかなければなりません。
利用者の人生に敬意を持ち、その方たちの思いを未来へと受け継いでいくことも、介護のプロとしての役割です。利用者は、ただただ介護の対象者というわけではありません。多くの苦労を重ねて、今の日本をつくってきた方たちです。そのことを少しでも心を片隅に感じていなければ、介護するものとしての気持ちも変わってきてしまいます。それが、効率重視の、利用者を無視した介護につながってしまうからです。介護が必要な高齢者に対して、長くて困難な歴史を生き抜いてきた自分たちの先輩として敬う気持ちをもつことこそが、プロフェッショナルな介護士としてのスタートラインになります。